企業防災で地震が発生したら?オフィスの安全確認と事業再開の判断方法

記事の要約

地震発生後、企業が優先すべきなのは従業員の安全確保と建物の安全確認です。建物の外観に大きな異常がなくても、構造部分や天井、設備、電気、ガスなどに問題が生じている可能性があります。本記事では、企業防災の観点から、地震後の建物点検、専門家との連携、設備の確認、事業再開の判断方法を解説します。従業員を安全に職場へ戻すための体制づくりと、災害後の二次被害を防ぐための実践的なポイントを紹介します。


企業防災における地震対策では、揺れが収まった後の対応も非常に重要です。地震発生直後に従業員を避難させても、その後の建物の安全確認や設備の点検が不十分であれば、二次災害につながる可能性があります。企業にとって、地震による被害は従業員の安全だけでなく、オフィスや工場の使用停止、設備の故障、取引先への影響など、幅広い問題を引き起こします。

特に注意したいのが、地震発生後の事業所への再入館や業務再開の判断です。外観上は問題がないように見える建物でも、内部の設備や構造部分に損傷が生じている場合があります。そのため、企業防災では、地震発生時の避難計画だけでなく、地震後の安全確認から事業再開までを一連の流れとして考える必要があります。ここでは、企業が取り組むべき地震後の安全確認と事業再開のポイントを紹介します。

1.企業防災で重要な地震後の建物安全確認

地震が発生した際、最初に優先すべきことは従業員の生命と安全です。揺れが収まった後も、余震や落下物、火災などの危険が残っている可能性があります。

従業員の避難が完了したら、企業は建物の被害状況を把握する必要があります。特に確認したいのが、建物の柱、梁、壁、床などの構造部分です。大きなひび割れや変形、建物の傾き、外壁の剥落などが確認された場合は、安易に建物内へ戻らないことが重要です。また、天井材や照明器具、窓ガラス、間仕切り、書庫などの非構造部材にも注意が必要です。建物の主要構造部分に大きな損傷がなくても、天井材や設備が落下することで従業員が負傷する可能性があります。

企業防災では、建物そのものの安全性と、室内で働くための安全性を分けて考えることが大切です。内閣府が公表している「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」では、建築に関する専門知識を持たない施設管理者などが、緊急・応急的に建物の安全確認を行うための方法が示されています。この指針には、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造など、建物の構造に応じた確認方法やチェックシートも用意されています。

企業は自社の建物に適した資料を事前に確認し、地震発生時に誰が点検を担当するのかを決めておくことが重要です。

2.地震後の設備点検は専門業者との連携が重要

建物の外観を確認するだけでは、地震による被害の全容を把握できません。企業のオフィスや工場には、電気設備、空調設備、給排水設備、通信設備、エレベーターなど、多くの設備が設置されています。これらの設備は、地震の揺れによって位置がずれたり、配管が損傷したり、電気系統に異常が発生したりする可能性があります。

たとえば、電気設備に異常がある状態で電源を再投入すると、故障や火災につながるおそれがあります。また、ガス設備や配管に損傷がある場合も、安易な使用再開は避けなければなりません。そのため、地震後の設備点検では、施設管理担当者だけで判断せず、設備の種類に応じて専門業者や保守会社と連携することが重要です。

特に、工場や倉庫では、生産設備や大型機械の固定状況、配管、薬品保管設備なども確認する必要があります。設備の異常を見落としたまま操業を再開すると、従業員の安全だけでなく、製品や周辺施設にも影響を及ぼす可能性があります。

さらに、エレベーターが停止した場合には、保守会社による点検や復旧確認を行うことが必要です。非常用発電設備についても、燃料や稼働状況、接続されている設備などを確認しておく必要があります。企業防災では、建物の点検担当者と設備の専門業者が連絡を取り合える体制を整えておくことが、地震後の安全確保につながります。また、保守会社の連絡先や設備の配置図、取扱説明書、点検記録などを、災害時にも確認できる状態にしておくことが望まれます。

3.電気・水道・通信などライフラインの復旧状況を確認する

建物や設備に大きな損傷が見られなくても、ライフラインが正常に機能していなければ、通常の業務を再開することは困難です。地震後には、停電、断水、通信障害、ガス供給の停止などが発生する可能性があります。企業は、それぞれのライフラインについて、使用可能な状態なのかを確認する必要があります。

電気については、商用電源の復旧状況だけでなく、分電盤や電気設備に異常がないかを確認します。非常用発電設備がある企業では、どの設備に電力を供給できるのか、どの程度の時間使用できるのかも把握しておくことが大切です。

水道については、給水設備や配管の破損、漏水などを確認します。トイレや手洗い設備が使用できなければ、従業員が長時間滞在することも難しくなります。

通信についても注意が必要です。電話回線やインターネットが利用できない場合、取引先への連絡や受発注業務、社内システムへのアクセスなどに支障が生じます。

特に、クラウドサービスを利用している企業でも、通信環境や電源が確保できなければ業務を継続できない場合があります。

このような事態に備えて、企業はライフラインごとに代替手段を準備しておくことが重要です。たとえば、非常用電源の確保、複数の通信手段の利用、代替拠点からの業務対応などが考えられます。

また、復旧状況を確認する際には、自治体や電力会社、水道事業者、通信事業者などの公式発表を参考にすることが大切です。ライフラインが一部復旧したからといって、すぐに通常業務へ戻れるとは限りません。企業は、必要な機能が確保できているかを確認しながら、段階的な業務再開を検討する必要があります。

4.企業防災では地震後の事業再開判断と責任者を明確にする

地震後の安全確認が進んだら、次に検討するのが事業再開の判断です。企業では、経営者や災害対策本部、施設管理担当者など、複数の関係者が判断に関わることがあります。しかし、誰が最終的な判断を行うのかが明確になっていなければ、対応が遅れたり、現場ごとに異なる判断が行われたりする可能性があります。

そのため、平常時から地震後の施設使用や業務再開に関する責任者と判断手順を決めておくことが重要です。

たとえば、建物の安全確認については施設管理担当者が情報を集約し、専門家や建物管理会社の意見を踏まえて災害対策本部に報告する体制が考えられます。

業務再開については、経営者や事業責任者が従業員の安全、設備の稼働状況、取引先への影響などを総合的に考慮して判断します。ここで重要なのは、建物が使用できることと、事業を再開できることは同じではないという点です。

たとえば、建物に大きな問題がなくても、従業員の出勤が困難な場合や、通信環境が整っていない場合には、通常業務の再開が難しいことがあります。そのような場合には、在宅勤務や代替拠点での業務、優先度の高い業務だけを先行して再開する方法も検討できます。

また、交通機関が停止している場合には、従業員の一斉帰宅を避け、安全な場所で待機できる環境を確保することも重要です。

内閣府の帰宅困難者対策ガイドラインでは、災害時の一斉帰宅抑制や事業所内での待機、従業員の安全確保などについて示されています。2026年1月改定版も確認し、自社の対応方針に反映させることが望まれます。内閣府+1

企業防災における地震対策は、揺れが収まった時点で終わるものではありません。安全確認、設備点検、ライフラインの確認、事業再開の判断までを一つの仕組みとして整備することが重要です。さらに、実際に地震が発生したことを想定した訓練を行い、判断の遅れや連絡体制の問題を確認しておくことも必要です。

地震後に従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。企業は日頃から建物や設備の点検を行い、災害後の対応手順を明確にすることで、従業員の安全と事業の継続性を高めていきましょう。

FAQ

Q1.企業は地震発生後、すぐにオフィスへ戻ってもよいのでしょうか?
A.地震の揺れが収まったからといって、すぐにオフィスへ戻ることは避けるべきです。建物の構造部分や天井、設備などに被害が発生している可能性があります。施設管理者による緊急点検や必要に応じた専門家の確認を行い、安全性を確認してから入館を判断することが重要です。

Q2.地震後の建物の安全確認は誰が行うべきですか?
A.施設管理担当者や建物管理会社などが中心となって状況を確認する体制が考えられます。ただし、専門的な判断が必要な場合は、建築士や建物の専門業者などに確認を依頼することが重要です。事前に点検担当者と連絡先を決めておきましょう。

Q3.地震後、企業が事業を再開するために必要な条件は何ですか?
A.建物の安全性、設備の稼働状況、電気・水道・通信などのライフライン、従業員の安全と勤務体制などを総合的に確認する必要があります。すべての業務を一度に再開するのではなく、重要な業務から段階的に再開する方法も検討しましょう。

関連記事

1.中小企業こそ重要!低コストで始める企業防災対策
https://kigyoubousai.com/kigyo-bosai-low-cost/

2.企業防災で地震が発生したら?オフィスの安全確認と事業再開の判断方法
https://kigyoubousai.com/kigyou-bousai-jishin-anzen-kakunin/

3.企業防災 防災庁の設置で何が変わる?企業が今から取り組むべき防災対策
https://kigyoubousai.com/company-disaster-prevention-agency/

参考サイト

防災✖️テクノロジー 官民連携プラットフォーム
https://bosaitech-pf.go.jp/

災害対策基本法の概要
https://www.bousai.go.jp/taisaku/kihonhou/pdf/kihonhou_gaiyou.pdf

内閣府・防災庁:企業防災のページ
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou

東京都防災ホームページ:事業者向け防災対策
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000048/index.html

中小企業基盤整備機構:地震対策BCPの必要性
https://kyoujinnka.smrj.go.jp/knowhow/21.html

関連記事

  1. 企業防災における情報収集と活用方法

  2. 企業防災のための地域連携の進め方

  3. 台風対策:企業防災の実践ガイド

  4. 企業防災の事例・グローバル企業の例

  5. 企業防災に強い経営者

    企業防災の重要性:経営者が知っておくべきこと

  6. 企業防災における災害時のITシステムの保護と復旧

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。